2004年01月21日

「風車」-第二二号(一九八〇年二月)

「風車」-第二二号(一九八〇年二月)

『原子力帝国』の著者、ロベルト・ユンク氏が来日した。来日直後に、親しく語り合う機会をもつことができた。原子力社会への鋭い批判は予期したとおりだが、気さくで優しい目をもった老人でもあった。

 ある企画で氏にインタビューする役になったのだが、インタビューの終わった後でも、話はつきない。どうしてもユンク氏の考えを確かめておきたいことがあった。

「間に合うと思いますか」と極端に聞く。既に世界は核兵器網で覆われ、原子力開発が「核の時代」に拍車をかける。我々は地上が氏の言うカタコンベ(地下墓場)になることを阻止できるのか。現在の政治情勢下では、八〇年代に多くの国が核武装するのは必至だ。ほんとうに間に合うのか、今の私には確信がもてない。

「今なら間に合う」という答。しかし「私は長い間核を見つめてきた。世界は一歩一歩深刻な核の泥沼に入っている。今という時を失したらもうこの泥沼からはい上がれない」ともいう。鋭い時代意識をもったジャーナリストの眼がそこにはある。

 今なら、と今しか、では大部違う。「あなたは本当に未来に確信がもてますか」「私は人民の力を信じたい。」そして老人は言った。「私が日本各地を見た後でもう一度話しましょう」。大きな期待と不安をもって、私はいま十日後の再会を待つ。(高木)

Posted by 編集部 at 2004年01月21日 17:18