「風車」-第五三号(一九八二年九月)
期せずして、この夏、四半世紀も前の米ソのそれぞれにかかわる核の悲惨を告発した書物が出版された。ローゼンバーグ著の『アトミックソルジャー』とメドべージェフ著の『ウラルの核惨事』である。
前者はアメリカのネヴァダの核実験―原爆を用いた地下演習―にモルモットのようにかり出され、傷ついた兵士の物語である。後者は、ソ連の南ウラル地方で起こった、放射性廃棄物貯蔵庫の爆発による大規模な放射能放出事故の告発の書である。
どちらも、広島・長崎とともに、人々の心にはっきりとめておくべき核のもたらした悲惨、生命の尊厳への挑戦であった。その時に、世界の人々に克明に事実が伝えていたならば、歴史は変わっていたかもしれないとすら思える。だが、まさにその意味の大きさ故に、米ソはこの事実のいっさいを歴史から抹殺しようとした。核開発を正当化し、原発をバラ色に描きたてるためであった。この隠ぺいは、全人類に対する最大の犯罪といってよい。
核大国がそれ故に陥った道徳的退廃の底の深さを、あらためて思いしらされる。(高木)
Posted by 編集部 at 2004年01月21日 17:29