「風車」-第七一号(一九八四年二月)
原子力船「むつ」をめぐる一連の報道を目にして、何とも奇妙に思ったのは、あたかも自民党がいっさいの決定権を持っているかのような報じられ方だ。実際にその通りらしいことは、このかんの経緯からして間違いないのかもしれないが、やはり、どこかおかしいのではないか。
原子力基本法によってタテマエ上の決定権を有している原子力委員会が、自民党側の政治決着(というより、決着の引き延ばし)にぶつける形で二十四日に発表した「むつ」存続の最終方針は、報道の扱いとしても小さく、ほとんど無視されている。向坊隆委員長代理をはじめとする全委員が一斉辞任、とのうわさが流れたりしたのも、無理のないことだろう。
しかし、だからといって、原子力委員たちに同情する必要は、さらさらない。事務局である科学技術庁の意向につねに追従し、みずから原子力委員会の権威を引き下げてきたのは、ほかならぬ歴代の委員たちだ。そもそも、ことここに至ったいまとなってなお、「原子力船の技術等の蓄積のための最も有力な手段」として「むつ」の存続をうたう姿勢は、まさに度しがたい。
原子力開発の大きな曲がり角を迎えて、原子力委員会のあり方もまた改めて問われている。(西尾)
Posted by 編集部 at 2004年01月21日 17:47