「風車」-第七九号(一九八四年一〇月)
ギリシャ神話の中に有名なプロメテウス神話というのがある。プロメテウスが天上の火を盗んで人間に与え、そのため彼はゼウスの怒りにふれて、山に縛られ、肝臓をはげたかに食われた。
ギリシャ神話は驚くほど人間について示唆的である。十月となると原子力推進派は「プロメテウスの火」をもち出し、原発、さらにはプルトニウムに結びつけ、「火を盗んだ」英雄プロメテウスを讃える。
ところが、ヘシオドスによれば、人間をもともと天上で自由に神と同じ火を使っていた。プロメテウスが奸計を働いたがために、ゼウスは人間から火を奪い、やむなくプロメテウスは火を盗んだ。だがこの盗んだ火はもはや「天の火」と同じでなく、いつも燃料を与えて維持しないと燃え尽きる「死すべき火」であった。「プロメテウスの火」は、実は不自由な火の象徴だったのである。そう考えると、「プロメテウスの火」はそのままプルトニウムに結びつく。
現代における「プルトニウム神話」は、カレン・シルクウッド事件だ。プルトニウム工場の女性技術者が殺されたこの事件は、探るほどに神秘を宿し、病めるプルトニウム社会を象徴する。まさに「神話」と呼びたいほどに示唆的な事件である。カレンの死から十年、いま軍艦に守られてプルトニウムが戻ってくる。(高木)
Posted by 編集部 at 2004年01月21日 17:49