2004年01月21日

「風車」-第九六号(一九八六年三月)

「風車」-第九六号(一九八六年三月)

 高レベル廃棄物に対するアメリカの新しい基準が決まった。それによると、地層処分に対しては、一万年を対象期間として安全を取り扱い、その期間内の漏れを○○キュリー以下に抑えると、核種ごとに規定する。

 一万年でもまだ短かい、という批判の声がすぐにも聞こえるが、一万年であっても法規制の対象としては、気の遠くなる長さだ。法をつくった人びとも、その基準が一万年先までの法規制力をもち得ないことを認めている。浅い地層に埋められる廃棄物など、たとえば、何十年に一度起こりうるような洪水で、ひとたまりもないだろう。

 世界の各民族は、ほぼ一様に洪水伝説をその神話の中にもっている。旧約聖書の「ノアの箱舟」の話の成立がおよそ三千年前か。そのもとのシュメールの洪水伝説は、四千数百年前にさかのぼれる。わずかに残されたシュメールの粘土板の破片の写真をみていると、神話の起源の時代は、はるかに想像の彼方だと思い知る。たった四千年ほど前のことなのだが。

 日本の自称専門家や役人たちも、この頃、「高レベル廃棄物も千年後にはウラン鉱なみに」などと気易くいう。いったい彼らに千年後を語る資格があるのか。

 鉄と金(武器とカネ)の文化を戒めるために天が洪水をもたらしたという、洪水伝説の寓意が、いまひとしお重く心に響く。(高木)

Posted by 編集部 at 2004年01月21日 17:55