「風車」-第一〇二号(一九八六年九月)
原子力委員会の高温ガス炉研究開発計画専門部会が「商業性が当面見込めないため、実用炉建設は見送るべきだ」との中間報告書をまとめた。
毎年毎年五十億円ずつ国家予算を注ぎ込みつづけた挙げ句の実用化断念である。先見性の無さは呆れるばかりだが、さらに驚くべきことに、実用化はあきらめながら、試験研究炉の建設は認めるという。その建設費の見積り額が、何と九百億円とか。
この中間報告書が明らかにされた前日、高温ガス炉開発の主体でもある日本原子力研究所は、原子力船「むつ」の原子炉設置変更の許可申請を行なった。原子炉の使用目的は「実験航海、乗務員養成および貨物輸送」から「実験航海」のみに変更する。ここでも、実用化は望めないまま、名ばかりの試験研究に、なお一千億円の国家予算を注ぎ込むというわけだ。
「原子炉の多目的利用」をうたった高温ガス炉、「原子力船時代」を掛け声とした「むつ」……。華やかだった昔日の大PRのツケが計画の完全放棄をためらわせるのだとしたら、いま行なっているPR活動も見直してみるのが身のためだろう。
新型転換炉、高速増殖炉、核融合と、どれをとってもやがて同じ道を辿ることは明白。すでに予兆もあらわれだした。PRのウソの皮のはがれるまでの時間は、どんどん短かくなってきている。(西尾)
Posted by 編集部 at 2004年01月21日 17:58