「風車」-第一〇八号(一九八七年三月)
招待を受けて、再びウィーンを訪れた。今度は招待なので、いろいろな料理をすすめられる。特にウィーンといえば、ウィンナーシュニッツェル―仔牛の肉の大きな切れをカツにしたもので、たいへんおいしい。
しかし仔牛の肉といえば、最も汚染のひどい食品のひとつだ。オーストリア政府の二月のデータによると、仔牛の肉のセシウム濃度は、平均でキログラムあたり七四〇〇ピコキュリー、先日インスブルックの屠場で、なんと十万ピコキュリーという"新記録"が出たという新聞記事もあった。ウィンナーシュニッツェルをすすめる人たちに、そのことを言うと苦笑い。「そんなことを言ったって、私たちの食べるものはみんな汚れている」。
そう言ってしまうのも無神経だが、その言い分も一理ある。毎日の生活者にとっては、汚染のないものを選んでいる生活など、もう続かなくなっているのだ。というのは、汚染の持続は当初予測されていた以上だからだ。牛肉六〇〇〇、羊肉二三〇〇、豚肉一四〇〇(ピコキュリー/キログラム)など、すべて予想以上の汚染である。
この分では、半年前のヨーロッパのガン死者予測を上向きに修正する必要もあるのでは、という声さえあった。あたらめてチェルノブイリ事故の深刻さを知る。だが、人びとの関心の低下も否定しようもないウィーンであった。(高木)
Posted by 編集部 at 2004年01月22日 00:06