2004年01月22日

「風車」-第一一八号(一九八八年一月)

「風車」-第一一八号(一九八八年一月)

 謹賀新年。めでたさよりも大変さが気にかかる辰年の春だが、わが反原発新聞も早くも十周年。その年頭にあたり、心に期するものもある。まずは今年もよろしく。

 ウランの原子核に中性子をあてると、さまざまな放射能ができる。かつてフェルミは、これをウランより重い新元素とみたが、ドイツの化学者ハーンは、その説に納得せず、化学分析の結果に基づいて、生成した放射能のひとつはどうしてもバリウムでしかない、と結論した。ウランが半分ほどの大きさのかけらに割れる―これは驚くべき発見であった。核分裂が発見されたのは一九三八年。今年でちょうど五十周年にあたる。

 才たけた科学者は、えてして理論的可能性ばかりを追い求め、現実に足をすくわれる。鈍重なまでに経験的事実にこだわる観測者が、時として大きな発見をなしとげる。核分裂の発見にまつわる、この貴重な教訓がかえりみられず、核エネルギーの利用という可能性ばかりが追い求められたのが、この五十年であった。

 世界各地の核被害者の続出、スリーマイル島やチェルノブイリなど巨大事故の頻発、そしてやり場なく蓄積を続ける核廃棄物やプルトニウム。五十年の歴史が残した現実を直視せよ。これからの歳月は夢から醒めるためのものでありますように。(高木)

Posted by 編集部 at 2004年01月22日 00:11