2004年01月22日

「風車」-第一二〇号(一九八八年三月)

「風車」-第一二〇号(一九八八年三月)

 グリム童話は、童話といいながら、けっこう残忍な話の多いことで有名だ。かの有名な「赤ずきん」のもとの話では、赤ずきんちゃんが狼に食べられてそれっきり、というのはよく知られている。

 グリム童話ゆかりの地は西ドイツのあちこちにあり、観光ルートになっている。その起点はハーナウ、兄弟の誕生の地だ。ところが、今やハーナウといえば、史上最悪の核スキャンダル発生の地となってしまった。

 この地にある核物質輸送会社「トランスヌークレア」社が、ドラム缶入りの放射性廃棄物を、ラベルをごまかしてベルギーの施設から、西ドイツのあちこちにこっそりと運んでいた。同社の汚職事件がきっかけとなって調査が行なわれると、出てくるわ出てくるわ、プルトニウムやコバルトを含むドラム缶が、西ドイツのあちこちから発見された。赤ずきんを被って潜んでいたのが、狼ならぬプルトニウムとは、現代童話は身の毛のよだつグリムな(ぞっとする)話である。

 調査が進むにつれ、事件は親会社NUKEM(西ドイツ最大の核燃料会社)をまきこむプルトニウムの国際密輸への疑惑にひろがり、西ドイツの原子力産業は大揺れだ。赤ずきんの話は、狼に近よるなという警告だとされる。現代のグリム話は、もうこれ以上核に近よるな、の警告であるにちがいない。(高木)

Posted by 編集部 at 2004年01月22日 00:12