2004年01月22日

「風車」-第一九八号(一九九四年九月)

「風車」-第一九八号(一九九四年九月)

 ロシアの核施設で技術者・作業員らが施設内に立てこもる事件が頻発しているという。給料の未払いなどに抗議してのものである。

 かつて核開発が盛んにすすめられていたときには、彼らは「国家が必要とする人間」として優遇され、矜持も高かった。ところが、核兵器解体の時代を迎えてみれば、右のごときありさまだ。解体作業の予算支出が遅れているとか。国家はその重要性を認めていないらしい。

 だが、核開発のあと始末をきちんと行なうことこそ、何より大切ではないのか。これに失敗すれば、重大な事故につながりかねない。プルトニウムや高濃縮ウランが横流しされたりしないかも、気がかりだ。

 前号の本欄で、核物質の密輸の話を取り上げた。それから一ヵ月の間に、事態はいっそう深刻になってきている。そして、核開発のあと始末の困難さと国家の無責任さという事情は、ひとりロシアのみならず、アメリカだって変わりがないだろう。かつて国家から与えられた誇りを同じ国家から奪われた核技術者たちの不満は、陰にこもって鬱積している。

 これは、そのまま、原子力発電の未来の予言だ。否、そんな未来は願い下げにしたい。将来の負担を少しでも軽くするには、一刻も早く脱原発に向かい、責任をもって万全のあと始末が行なえる体制を、いまから築いていくべきだろう。(西尾)

Posted by 編集部 at 2004年01月22日 00:56