『はんげんぱつ新聞』311号(2004年2月)
反原発講座スペシャル
藤田祐幸さん(慶應義塾大学)に聞く
--劣化ウラン弾については、もう七年も前の「講座」で取り上げたきりです。気にはなりながら、うまく扱えずにきてしまいました。今日は、反原発運動にとっての劣化ウラン弾問題の意味についてお話をうかがえればありがたいのですが。それとも、そういう問題の立て方をしないほうがいいのか……
●いや、そんなことはありませんよ。本質だと思っていることは二つあって、一つは、原子力問題とはつまるところ被曝問題なんですね。その意味で、原発の被曝問題と劣化ウラン弾の被曝問題を分断して一方を無視するようなことがあってはいけない。
もう一つは、劣化ウラン弾の出生と言いましょうか、原発の燃料製造の過程における廃棄物だという点ですね。日本の原発の燃料ウランの大半はアメリカの濃縮工場で濃縮をしてもらっている。そこで生まれた廃棄物が劣化ウランです。
つまり、天然ウランに〇・七二%ふくまれているウラン-235が〇・二%に減って劣化した「廃品ウラン」ですね。これは要らないものだからとして、所有権を無償で濃縮工場側に移転している。そうやって濃縮工場に貯め込まれた劣化ウランの一部が砲弾になったり、戦車の装甲になったり、飛行機の重りになったりしているわけです。金属ウランは重くて硬くて、何といってもお金がかからないものですから。
その意味で、日本の原子力発電とイラクなどでの劣化ウラン弾による被曝とは一つながりだということです。
--かつては大量の核兵器用ウランの濃縮をしていましたから、その劣化ウランも使われているんでしょうが。
●実態は不明です。軍事用と原発用とで分けてあるわけではないでしょう。
--もちろん劣化ウラン弾がつくられるから原発に反対するとかじゃなくて、同じ被曝問題として原発にも劣化ウラン弾の製造・使用にも反対だと。
●そうですね。
--イラクを訪問されたのは、昨年の夏前でしたっけ?
●五月下旬から六月はじめにかけてですね。ガンマ線の測定器を使っていろんな場所の放射線強度を測定し、被弾した戦車の内側などを濾紙で拭き取った試料と、製氷工場で採取した粒状の試料を持ち帰りました。劣化ウラン弾やその残骸が至るところで見つかり、撮影してきました。
戦車の装甲が、撃ち抜かれたり、まるでバターをナイフで切ったように切り裂かれていたりしているんですが、砲弾が通過した穴や戦車の内部、製氷工場の屋根を貫通し床にあけられた穴の付近では、自然放射線の数倍、数十倍の強度でしたね。
持ち帰った試料を金沢大学の小村和久さんに測定してもらったところ、ウラン-235が見事に〇・二%でした。文句なしに濃縮工場で発生した劣化ウランですよ。
--よそでは、プルトニウムの入ったものも見つかっているとか。
●劣化ウランだけでなしに、軍事用のガス冷却炉の燃料を再処理した後の回収ウランも一部使われているんでしょう。でも、割合としてはごく少ないと思います。
--前にコソボとかにも行かれていますが、その時と違うのは、今回は劣化ウラン弾がそこいら中に転がっていたことだと報告されていますよね。
●一九九九年と二〇〇〇年にコソボをはじめ、セルビア、ボスニアで調査をしたんですが、その時は簡単には見つからなかった。今回は大量に見つかっています。それだけふつうの兵器として使われているんでしょう。
--でも、日本政府は認めない。アメリカに問い合わせたけど答えてくれないから、使われたかどうかは確認できない、と。
●アメリカ政府も日本政府も、政治的には認めませんね。それと、今回の調査ではっきりしたのは、米軍だけではなくて、イギリス軍も派手に劣化ウラン弾を使ったということです。
--劣化ウラン弾が使われたことによる被害の実態というのは、なかなか難しい問題ですが。
●影響としては、主に三種類あると思うんですよ。まず戦車に当たって燃えて酸化物の微粒子になる場合。それを吸入した時の影響が問題になります。第二に、金属ウランがそのままの状態で放置される場合。皮膚に直接触れた時のベータ線被曝を考慮する必要があります。
--最大の問題と考えられているのは、微粒子の吸入ですよね。
●いや、実は僕がいちばん深刻に考えているのは、三つ目の地下に撃ち込まれた場合です。地中のウランが酸素をふくむ水と反応して、水溶性となって土壌と地下水を汚染する。子どもたちが土を手でいじるといった心配もあります。さらに、生態系に取り込まれて、長期にわたって影響を与えつづける可能性が高いと思います。
--現実に被害が出ていることは事実で、劣化ウラン弾が使われたのも事実です。劣化ウランに放射能毒性と化学毒性があるのも事実だけれど、それぞれの事実の間をいままでの科学的知識で必ずしもつなげないということがあります。だから因果関係はないと言うのは明らかに誤りですが、強引に「科学的」理屈づけをするのには抵抗があります。
●確かにいろいろ言う人がいますが、データの間違いもあると思う。むしろわからないことが当たり前なんです。被曝の歴史自身が半世紀しかないんですから。そのなかで広島・長崎の被曝の影響と、チェルノブイリと、JCOと、みんな違う。特にアルファ微粒子による内部被曝というのは、ほとんど未経験ゾーンと言っていいでしょう。無理に理屈をつけるより、まずはきちんと現実を見るべきです。
おまけに重金属としての化学毒性との複合被曝なわけですから。そう考えればバスラの病院で僕が見た子どもたちの症状も理解できるんですね。
--他の化学物質との複合効果だって考えられます。調査もまだ十分でないわけですが、そもそも因果関係がはっきりするようになったら、それこそ被害が拡大するいっぽうということで、そうなって欲しくない。
●新しい被曝なんだ、未知の被曝なんだと思うんです。だからこそ予防原則が大事なんですよ。
実は僕も、現場で子どもたちと会うまではそんなにせっぱ詰まった思いはなかったんですけど、子どもたちと会ってしまってからはね。
--製造や使用をとめなくちゃいけないし、これ以上被害をひろげないようにしなくちゃいけない。では、私たちに何ができるのか。
●禁止条約とかの国際的な運動がありますので、それに協力していくことが考えられます。
さしあたりすぐに必要なのは、被害者の医療と、劣化ウラン弾の回収ですね。地上に散乱している分は早急な回収が可能でしょう。と言っても、それが民間の工場の床なんかにまでゴロゴロあるわけです。本当に至るところにあるので、それはそれで大変ですね。
それと、僕が重視しているのは、前にも言ったとおり、撃ち込まれて地下にあるものです。今なら掘れば弾丸の形で回収できますけど、五年もすればどうなってしまうか。二〇〇〇年にセルビアに行った時、地下から一年後に掘り出したのを見せてもらったんです。太さが半分近くにやせてしまってましたね。
将来世代に対しての責任の取り方としては本来、深さ二㍍までの土を全部掘り返してでもと思います。せめて集中的に撃たれた場所だけでも土壌を取り除く必要があります。
それとやはり、日本の劣化ウランに対する監視体制を強めることですね。日本の劣化ウランがどうなっているのか、どうなるのか。所有権を放棄していれば責任はないのか。
--日本国内で濃縮した際の劣化ウランの所有権はどうしているんでしょう?
●さぁ。調べてみないといけないですね。
--廃棄物については、電力会社か濃縮工場か、どちらが責任を持つか、未だに決められていません。同じくあいまいにされているのかも。
●人形峠で劣化ウランを見てきましたけど、48Yシリンダーという輸送用の容器に詰めたまま、プレハブの小屋の中に積み上げてありました。
--六フッ化ウランで貯めていますよね。
●たいへん不安定な扱いですね。
--六ヶ所ではもう人形峠の倍以上の劣化ウランを貯め込んでいます。二〇〇二年度末で約六千七百トンになるとか。「将来高速増殖炉等で利用する見込み」と言うんですが。
●現実的には見込みゼロです。要するにごみですよ。廃棄物問題としてきちんと認識する必要があると思います。
--その通りですね。ありがとうございました。
(聞き手=編集部 西尾漠)
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『はんげんぱつ新聞』311号(2004年2月)もくじ
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長尾光明さんに労災認定
-原発労働で多発性骨髄腫を発症
片岡明彦(関西労働者安全センター事務局)
広がれおひさま発電所
龍池妃都美(きょうとグリーンファンド)
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管理区域外に廃棄物を持ち出し、焼却も
-建て前を覆す原発の管理実態
武本和幸(柏崎刈羽支局)
2004年度原子力関係政府予算案を読む
================各地からの便り===============
圧力抑制プールの目詰まり問題は未解決
-安全評価のやり直しを!
佐藤和良(脱原発福島ネットワーク)
不良施工の六ヶ所再処理工場を動かすな
山田清彦(反核燃一万人訴訟原告団)
安全無視の敷地境界切り詰め
-島根3号機増設にストップを!
芦原康江(島根原発増設反対運動)
川添房枝さんどうぞ安らかに
荒武重信(川内原発建設反対連絡協議会)
アオテオロア・ニュージーランドの
平和教育に学ぼう
大庭里美(グリーン・ネットワーク)
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反原発講座スペシャル
「反劣化ウラン弾と反原発」
(藤田祐幸さんに聞く)
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月間情報(2004年1月)
12月の設備利用率
DATA BOX:原子力産業の売上高と従業員数の推移
原発「推進者」の発言から
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もくじ以上
小泉首相が昨年十一月十八日、ロシアのプーチン大統領の密使と会い、「北方領土核貯蔵施設」構想を提案した--と、『エコノミスト』一月六日号が伝えている。同誌「インサイドコラム」によれば、「小泉首相の口調はいつになく熱が入っていた。プーチン大統領の密使も、まんざらではないという態度」だったとか。本紙でも既に何度か、鈴木篤之・現原子力安全委員の提言や反対運動の動きなどを報じたことがある話題だが、にわかに生臭いものになってきたようだ。
『エネルギーレビュー』の一月号でも、プーチン大統領のアドバイザーを務めたという日本エネルギー経済研究所の内藤正久理事長が、次のように語っている。「万年単位の時間がかかる廃棄物の長期処理の責任を、寿命に限りがある民間企業に負わせることに無理があります。ロシアは最終処理はシベリアでやってもいいと言っています。国内での完全処理にこだわらず、核燃料サイクルの仕組みを見直すくらいの発想があっていいと思います」。
かつての鈴木提言では、核軍縮に必要な資金の提供という「国際貢献」の大義名分があった。それもうさん臭いが、今や「北方領土の実効支配を可能にする」だの「国と企業の役割分担」だのと、何とも情けないうたい文句がひっついている。それだけ現実的な構想になったのだろうか(N)