2004年12月19日

風車(第321号=2004.12)

 青森県と六ヶ所村、日本原燃の間で十一月二十二日、六ヶ所再処理工場でのウラン試験に関する安全協定が締結された。二十四日付電気新聞の一面には、「サイクル大きく前進」の文字が踊る。
 立会人をつとめた藤洋作・電気事業連合会会長のコメントにいわく「これはわが国の原子燃料サイクルの確立につながる、極めて大きな意義を持つ一歩と受け止めております」。中川昭一・経済産業大臣の談話は「核燃料サイクル事業の国内における確立に向けた大きな前進として高く評価している」
 が、同じ電気新聞の「デスク手帳」には、こうあった。「前進ととらえるのかそれとも…。ルビコン河を渡ったカエサルは一定目標を遂げたが果たして」。
 元老院決議に背いてローマに進軍したカエサルになぞられられた六ヶ所再処理工場は、果たして一定目標すら遂げられるかどうか、また、一定目標は遂げてもたちまち独裁者の末路を辿るか。いずれにせよ「前進」には疑問符がつく、ということだろう。
 会長のコメントに反して、電力自由化の進展で経営の効率化を求められている電力業界には依然再処理を嫌う声が残り、大臣談話に反して経済産業省内にはサイクル政策反対論がくすぶっている、とマスコミは伝える。
「責任転嫁サイクル」(同省官僚)が回り出すのは、なんとしても止めなくてはならない。(N)

Posted by 編集部 at 18:17

2004年12月04日

コラム「風車」319号

 電力会社の原子力部門の中に設計・建設部門を優位とし、運転・保守部門を軽視する風潮があるのでは――美浜事故にからめて、電気新聞の藤森礼一郎論説主幹が問いを発した。答えるのは、日本原子力産業会議の宅間正夫副会長。

 東京電力出身で、柏崎刈羽原発の所長などをつとめた宅間副会長のいわく「確かにそのような傾向は否定できないと思います。(中略)事実、試運転を終えて営業運転に入ると、設備の完成を目指した攻めの職場である建設所が保守という一見守りの職場である発電所に変わる、あるいは建設部門から発電所保守部門へ配転になる、そうすると職場の活力や従業員の意識が微妙に低下するということを、経験しています」

 宅間副会長は「建設が『ものづくり』の価値創造なら運転保守は『ものそだて』という価値創造へのチャレンジです」などなどと「育てる」職場の意識向上を願う熱弁を振るうのだが、力めば力むほど実情から離れてしまう感は否めない。そう言えばかつて原子力安全規制部門の独立案に対し、当時の科学技術庁の石田寛人事務次官がこう疑問視していた。「仕事を安全規制の範囲に限ることになり、職員の士気が下がる」

 外部委託で「マイプラント意識が希薄」な電力会社が運転し、士気の下がった原子力安全・保安院が規制する。どこかおかしくないか。(N)

Posted by 編集部 at 17:38

コラム「風車」318号

 八月十一日、第五回の原子力新長期計画策定会議でのこと。冒頭、美浜事故被災者への黙祷と原子力委員長あいさつの後、東京電力の勝俣社長が「同じ電気事業者として」おわび。続いて電力総連の笹岡会長も、おわびを述べた。

 勝俣社長も言えなかった「信頼回復」にまで笹岡会長は言及したが、この「おわび」「信頼回復」は、それぞれ誰に対するものなのだろう。労働者の生命・健康を守れなくてごめんなさいというおわびと労働組合への信頼回復--ではなさそうだ。社会を騒がせたことへのおわびと原発への信頼回復。どうやらそれしか頭にないらしい。

 下請け労働者のことなど、毛ほども考えていないのだろう。八月二十四日の第六回会合に寄せた「発言メモ」では、労働者の被曝線量について「労使協議により国の基準を大きく下回るものとしております」と自慢しているが、もとより下請け労働者の被曝低減は労使協議の対象外。社員の低減分は下請け労働者に回される。

 会社側は「たかが労災」とうそぶいた。労災の被害者となるのは下請け労働者ばかりという現実がある。とはいえ、だからそんなふうに言えると見るのは一面的だろう。むしろ、下請け労働者の生命を軽く見ているから下請け労働者に労災が集中するのだと強調しておきたい。(N)

Posted by 編集部 at 17:37

コラム「風車」317号

 米連邦高裁は七月九日、ヤッカマウンテン高レベル廃棄物処分場計画の差し止めなどを求めたネバダ州側の訴えを退ける判決を下した。一方、同裁判所は、放射能の規制期間を一万年に限定した環境保護庁の規則については不適切としており、今後どう尾を引くかは予断を許さないという。

 核燃料サイクル開発機構による、日本における処分の安全評価でも、被曝のピークは八十万年後とされている。但し、線量は公衆の被曝限度の二十万分の一だから何の問題もないというわけだ。ネバダ州側は、三十万年後のピークで、この限度の二倍にもなることを否定できないと主張していたらしい。

 一万年に限定するのは不当だが、そのはるか以前に危険は顕在化しそうである。米原子力規制委員会の放射性廃棄物諮問委員会は、坑道壁面からの液滴から容器を防護するドリップシールドの損傷が容器そのものの破壊につながることを懸念し、連邦議会の放射性廃棄物技術審査委員会は、発熱による腐食で千年のうちに穴があくとしてエネルギー省の容器設計の変更を要求している。

 核燃機構の前述の評価は、千年で容器が全壊するという「安全側に立った仮定」でのものだそうだが、天然の地層ならその後何十万年も放射能をおとなしく抱いていてくれるという保証は、やはりない。(N)

Posted by 編集部 at 17:37

2004年05月14日

風車(第314号=2004.5)

 六ヶ所村に核燃料サイクル基地を受け入れた北村正哉青森県知事は、高レベル廃棄物の処分場だけは頑として拒否した。次の木村守男知事も「処分場にしない」との確約を当時の科学技術庁長官に求めて、海外返還廃棄物の輸送船の接岸拒否まで行なった。

 使用済み燃料の貯蔵に税金をかけることにした新潟県柏崎市の西川正純市長は、「それなら長期保管を」という電力会社側の発言に「原発立地点に対し失敬な話」と猛反発し、県の高橋豊産業労働部長は、「ごみが余ったから庭に埋めるというような話が出てくるのは極めて不愉快」と議会で答弁した。

 再処理工場の地元でさえ高レベル廃棄物の処分場は拒み、原発の地元ですら使用済み燃料の貯蔵を嫌う。ところが、そんな施設を進んで誘致しようとする自治体が、ここにきて急に目立ってきた。その背景を、宮崎県南郷町の阪本勝久町長はこう説明する。「国は三位一体の改革(補助金の削減、地方交付税の削減、税源の委譲)を協力に推し進めており、本町においても、毎年数億円の単位で歳入額の減少が続いています」「恒久的かつ安定的な歳入財源確保対策は、南郷町にとって最重要かつ緊急の命題となっており」云々。

 どの自治体も追い詰められている。誘致は実態を知らない浅慮だが、町民が町のあり方を考える契機とし、転じて福となせないか。(N)

Posted by 編集部 at 14:19

2004年02月12日

風車(第310号=2004.1)

 小泉首相が昨年十一月十八日、ロシアのプーチン大統領の密使と会い、「北方領土核貯蔵施設」構想を提案した--と、『エコノミスト』一月六日号が伝えている。同誌「インサイドコラム」によれば、「小泉首相の口調はいつになく熱が入っていた。プーチン大統領の密使も、まんざらではないという態度」だったとか。本紙でも既に何度か、鈴木篤之・現原子力安全委員の提言や反対運動の動きなどを報じたことがある話題だが、にわかに生臭いものになってきたようだ。

『エネルギーレビュー』の一月号でも、プーチン大統領のアドバイザーを務めたという日本エネルギー経済研究所の内藤正久理事長が、次のように語っている。「万年単位の時間がかかる廃棄物の長期処理の責任を、寿命に限りがある民間企業に負わせることに無理があります。ロシアは最終処理はシベリアでやってもいいと言っています。国内での完全処理にこだわらず、核燃料サイクルの仕組みを見直すくらいの発想があっていいと思います」。

 かつての鈴木提言では、核軍縮に必要な資金の提供という「国際貢献」の大義名分があった。それもうさん臭いが、今や「北方領土の実効支配を可能にする」だの「国と企業の役割分担」だのと、何とも情けないうたい文句がひっついている。それだけ現実的な構想になったのだろうか(N)

Posted by 編集部 at 17:28